Research

研究内容

有機電子ドナー材料

可溶性ポルフィリン電子ドナー

 有機薄膜太陽電池の電子供与材料には主に高分子が使用されてきたが,最近では合成・精製の簡便さやバッチ間の再現性の高さから,低分子溶液塗布型有機薄膜太陽電池の研究も盛んに行われている.しかし変換効率は高分子に比べて未だ低く,高効率化に向けて新規低分子骨格の開発が望まれている.我々はそのような分子骨格としてポルフィリンに注目している.ポルフィリンは高い光安定性と吸光係数により,古くから機能性骨格として用いられてきたが,可溶性ポルフィリンが塗布型有機薄膜太陽電池に使用された例は極めて少ない.

 ポルフィリン分子の溶解性を確保するため5位と15位に嵩高いトリイソプロピルシリル基を,π共役系を広げるため10位と20位に種々のアリールエチニル基を導入した.また中心金属にMgをもつため配位溶媒を加えることにより,溶解度を向上させることができる.PCBMを電子アクセプターとして用いたバルクヘテロ接合有機薄膜太陽電池において,2.5%の変換効率を示す.

低分子ローバンドギャップ材料

 耐久性があり長波長光吸収が可能な低分子ドナー材料の開発を行っている.例えばテトラセンに電子求引基であるイミド基と電子供与基であるジスルフィド基を組み込んだテトラセン誘導体(テトラセンイミドジスルフィド,TIDS)は,850 nmまでの長波長光吸収が可能で,塗布および蒸着プロセスに適用可能な低分子ローバンドギャップ材料である.また,テトラセンが反応しやすい部位に付加基を組み込んでいるので,テトラセンに比べ酸化に対して格段に安定な材料である.

有機半導体の分子組織構造の制御

 有機半導体の固体中における分子組織構造は有機薄膜素子の性能に大きく影響を及ぼす.厚さ約100 nmの有機薄膜中における分子集合体化学は,重要でありかつ,始まったばかりの挑戦的課題である.コアとなるテトラセンに互いに引き合う相互作用を示す2種類のユニット(C6H5とC6F5)を組み込むことにより,テトラセン骨格のパイスタック構造を誘起することに成功した.テトラセン骨格の積み重なりはキャリア輸送において有利であることを明らかにした.また,ポルフィリン分子のトポロジー設計により,分子の配向配列制御が可能であることを明らかにした.

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